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函館地方裁判所 昭和48年(む)78号 決定

被疑者 大森篤範

主文

1  函館地方検察庁検察官小林永和が、昭和四八年四月一三日付でなした別紙第二記載の「接見等に関する指定」は、これを取消す。

2  同検察官が、申立人に対してなした申立人と被疑者大森篤範とが昭和四八年四月一九日中に接見することを拒否するとの処分は、これを取消す。

理由

一  本件申立の趣旨および理由は、別紙第一「準抗告の申立書」と題する書面記載のとおりである。

二  よつて、事実の取調べをなした結果、検察官小林永和が弁護人大巻忠一主張のとおり別紙第二記載のとおりの指定(以下一般的指定という。)、および弁護人と被疑者大森篤範とが昭和四八年四月一九日中に接見することを拒否するとの処分をしたことが認められる。

三  右の一般的指定がなされると、指定書は、被疑者および監獄(または代用監獄)の主務者に交付されて、被疑者と弁護人の接見等が事実上制限されることになり、弁護人は、申出によつて、検察官から具体的に接見等の日時、場所および時間を定めた指定書の交付を受け、これを持参することによつて、接見等の目的を達することができるというのが運用の実際である。

このように、事実上接見等の一般的制限をともなう指定をすることは、のちに具体的指定により接見等の機会がつくりだされることを予定しているとはいえ、刑事訴訟法第三九条第一項および第三項の文理にそわないだけでなく、類型的にみて弁護権の行使を不当に制限することになるおそれがあるから、許されないものと解される。

以上のとおりであるから、本件一般的指定は、同法第四三二条、第四二六条第二項によつて、取り消すこととする。

四  次に本件具体的指定拒否処分の取消申立について検討するに、事実取調の結果によると、申立人は、昭和四八年四月一三日および同月一六日に各一五分宛被疑者と接見していたこと、申立人は同月一八日午後二時三〇分ごろ、同検察官に対して「同月一九日中に、時刻は何時でも差支えないから一五分間、被疑者と接見したいので、時刻、時間を指定されたい」旨申し出ていたこと、同検察官は右申し出に対する時刻、時間を指定することを拒否したことが、それぞれ認められる。しかし、捜査の進捗状況を勘案してみても、四月一九日中に時刻を制限しない僅か一五分間の弁護人の接見を拒否することが、捜査のため必要であるとは到底認めることができない。

以上のとおりであるから、本件具体的指定拒否処分は、同法第四三二条、第四二六条第二項によつて、取り消すこととする。

五  以上の次第であるから、主文のとおり決定する。

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